悪くはなさそうだけど、世間の常識を変えるほどでもなさそうな東芝のコードレス掃除機「VC-NX1」

中国、美的集団(マイディアグループ)の傘下に入った東芝から意欲的な掃除機の登場です。

サテンゴールド↓


東芝 コードレスサイクロン式クリーナー VC-NX1-N(サテンゴールド)

と、ブラストシルバー↓


東芝 コードレスサイクロン式クリーナー VC-NX1-S(ブラストシルバー)

「ここからコードレスクリーナーの常識が変わっていく」

だそうです。

大きく出て来ました。

資本的な憂いがなくなって、いよいよ反転攻勢という感じなのでしょうか。

「もっと、強い吸引力を」
「もっと、長時間の運転を」
「もっと、軽い操作性を」
「そして、部屋のすみずみまで細かなゴミも逃さない」

ウオー!

これは、すごいです!

ちょっと欲張りな感じすらします!

吸引力が強くて、長時間運転できて、軽くて、ゴミを逃さない!

なるほど、「常識が変わる」とふん反り返るのには、当然実力の裏付けがあるというワケです。

もう掃除機は、この「VC-NX1」で決まり!

とは、さすがにならないわけですが、この「VC-NX1」が、いったいどのくらい優れているのかは気になるところです。

まず「強い吸引力」です。

なんと、この「VC-NX1」のモーターはジェットエンジンの回転数をはるかに超える高速回転で回るのだそうです。どうしてジェットエンジンと比較するのかは、よく分かりませんが、その回転数は毎分最大約12万回転とされています。

約12万回転。

これは自称最強のコードレス掃除機を標榜するダイソン「V8」シリーズの毎分11万回転という回転数を上回る数字です。

なるほど。

あのダイソンを回転数で凌駕するとなると、これは期待出来る感じがします。ただ、11万回転→12万回転は9%アップくらいなので、「常識が変わる」という感じまではいかないような気もします。そして、残念なことにダイソンの新モデル「V10」には、毎分最大12万5千回転するモーターが搭載されてしまったので、ますます「常識」を飛び越える回転数ではなくなってしまった感があります。まあ、これは「V10」の方がこの「VC-NX1」よりも後発なので、仕方ないところもありそうです。

次に「長時間運転」をみると、この「VC-NX1」の運転時間は、大容量バッテリーを搭載したことで最長約60分となっています。

これは文句無しで良さそうです。

仮想ライバル(たぶん)のダイソン「V8」の運転時間は最長40分なので、すでに十分上回っているのですが、「V8」はモーター駆動するヘッドを付けると、運転時間が最長30分とさらに10分短くなります。

この「VC-NX1」も床用のヘッドはモーター駆動のパワーブラシですが、特に運転時間についての記載は無いので、この60分というのは床用のパワーヘッドを付けた状態での運転時間なのでしょう。

そしてダイソンの新型「V10」は運転時間についても、最長60分と「V8」から伸ばして来ているのですが、やはりモーター駆動のブラシが付いたヘッドを装着した場合は、最長40分まで落ちてしまうので、運転時間の長さについては、この「VC-NX1」の方が分があると言えるでしょう。ただ、これで「常識が変わる」かどうかは、意見が分かれるところような気もします。

では、続く「軽い操作性」はどうなのでしょうか。

この操作性はこの「VC-NX1」を選択する上で最大のポイントとなる可能性があります。

なにしろ外観を見ても分かるように、この「VC-NX1」はキャニスタータイプの掃除機です。キャニスタータイプでありながらコードレスという掃除機というジャンルは、こちらもライバルとなるシャープが以前から、そして現在も「RACTIVE Air」シリーズとして製品化して来ています。

コードレスでありながらキャニスタータイプである掃除機にとって「軽い操作性」は最重要課題でしょう。

床を掃除しているときは本体を転がしておけますが、狭いところや高いところを掃除したり、一戸建てで1階と2階を上下するときなど、掃除をする際、どうしても本体を転がしていけない場合があるのは容易に想像が出来ます。そしてその場合はキャニスタータイプの掃除機といえども、その本体を持ち上げなければいけないのです。

そこで問題となるのが、本体そのものの重さです。

スティック型コードレス掃除機であるダイソン「V8」の重さは2.61kg、新型「V10」は2.58kgとなっていますが、この「VC-NX1」は本体だけで2.8kg、ヘッドを装着した標準使用状態となると4.2kgの重さとなってしまいます。

片手で持てない重さではありません。

この「VC-NX1」には、持ち上げやすいようにグリップが付いている上に、本体は円筒形をしているので、左右だけでなく前後の方向転換もたやすく出来る構造になっています。

ただ、それでも重さは重さです。

常に本体全部を持ち上げた状態で掃除をしなければならないスティック型より、床を掃除するときは本体を転がしておけるキャニスター型の方が楽だという考え方も可能ですが、これについては、使う人の掃除の仕方によって大きく違いの出るところでしょう。

そして、同じキャニスター型コードレス掃除機であるシャープ「RACTIVE Air」の最上位モデル「EC-AS700」の本体の重さが標準使用状態で2.9kgしかないというところも、この「VC-NX1」にとっては不利なポイントとなりそうです。

クルクル回転する本体構造や、グリップの動きと連動するヘッドなど、工夫はされている感じですが、操作性については「常識が変わる」というほどでは無さそうな感じがしてしまいます。

そして最後の「部屋のすみずみまで細かなゴミも逃さない」ですが、これは具体的に対応するものは特になさそうです。おそらく、静電気を発生させにくい上に、除菌効果も見込める床用パワーヘッドや、小さなゴミを検知する「ゴミ残しまセンサー」や、延長管の先端にあるライトや、0.5μmの粒子を99%キャッチするフィルターなどの仕様全部を合わせて「部屋のすみずみまで細かなゴミも逃さない」ということなのだと思われます。

まあ、これは以前の製品から搭載されているものが多いので、役に立つ機能なのでしょうが、やはり「常識が変わる」というほどのことではなさそうです。

結局のところ、この「VC-NX1」は、ダイソン「V8」並みのパワーを持ちながら、「V8」よりバッテリーが長持ちして、キャニスター型「RACTIVE Air」よりは重たいキャニスター型コードレス掃除機ということになりそうです。

この「VC-NX1」をもってコードレスクリーナーの「常識が変わる」かどうかは大いに議論の余地があるでしょう。

しかし、キャニスター型のコードレス掃除機であるということにさえ問題を感じなければ、この「VC-NX1」は、バッテリーの持ちの良さにくわえて、ゴミセンサーやライトなども含めたトータルの使い勝手でダイソンの「V8」或いは「V10」と比べても対抗できる可能性はありそうです。

ただ、この「VC-NX1」は、ゴミを捨てるときにメッシュフィルターのチリ落としが必要な上に、フィルターの手前に市販のティッシュを挟んでおくことが公式に推奨されているティッシュ&チリ落としサイクロン構造となっていることは注意が必要かもしれません。ちゃんとお手入れをすれば特に性能的に問題はありませんが、サイクロン部分単体での性能については、ダイソンの製品とは少し差がありそうです。

■VC-NX1のスペック

集じん容量0.4L
吸込み仕事率-
運転時間標準:60分・強:約7分・おまかせ:約20〜30分
充電時間約5時間
運転音-
本体サイズ(使用時)幅261×奥行234×高さ185mm
重さ2.8kg(標準使用時:4.2kg)
バッテリー寿命充放電約3,100回
バッテリー価格-

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