キャニスタータイプの掃除機なのにコードレスという意欲的な製品です。
しかも、同じ系統の製品でサイクロンタイプと紙パックタイプの合計4モデルという充実のラインアップとなっています。メーカーの並々ならぬ意欲をうかがわせます。これにより、シャープのコードレスモデルのブランド名の1つとなっていた「RACTIVE Air」はスティック型とキャニスター型の両方を揃えることになります。
この「EC-AS700」は、たぶん主力と思われるサイクロンタイプで、さらに付属品が充実したプレミアムモデルとなっており、このシリーズの浮沈が掛かる重要なポジションにいると言えるでしょう。
シャープ コードレスキャニスターサイクロン掃除機 RACTIVE Air プレミアムモデル ゴールド EC-AS700N
掃除機がコードレスなのと、コード付きなのと、どちらが便利なのか?
もしも、同じ性能ならコードレスの方が確実にベターでしょう。
掃除をしながら、部屋を移動するたびに電源プラグを抜き差しするというのは、ただの手間でしかありません。コードレス掃除機なら自在に移動して掃除をすることが出来ます。
しかし、コードレス掃除機はパワーをバッテリーに頼る分、当然ですがパワー、そしてバッテリーの持続時間にも制限があります。コード付きの掃除機であれば、コンセントからほぼ無限のパワーを得ることが出来ます。
機動力を取るか、パワーを取るか。
この2択がコードレスか、コード付きかの選択を分けることとなります。
ところが、この「EC-AS700」はコードレスでありながら、比較的サイズの大きいキャニスタータイプの掃除機となっています。
コードレスなのに機動力を犠牲にしてしまって良いの?
と反射的に考えてしまうわけですが、実は本体を床に置いた状態で掃除が出来るキャニスタータイプの掃除機の方が、常に掃除機全体を持っていなければならないスティック型の掃除機より、場合によっては操作性が高いということはよく指摘されることだったりします。
もちろん、高い場所の掃除や、1階と2階を行き来する場合など、掃除機そのものを持ち上げる必要がある場合は話が変わって来るわけですが、この「EC-AS700」はその点にも配慮されていて、本体の重さは普通に使用する状態でなんと2.9kgしかありません。
これは相当軽いというか、メーカーによるとパワーブラシを搭載したキャニスタータイプの掃除機では世界最軽量だそうです。
本体の形状も大きな持ち手が付いて持ち運びやすいようになっており、これなら重さはそれほど気にならないかもしれないという期待感は十分です。
重さが気にならないということになると、キャニスタータイプの特徴である比較的大きなサイズを生かすことが可能となります。この「EC-AS700」にも大風量のターボモーターが搭載されており、メーカーによると、その吸引力はコード付きキャニスタータイプと同等程度なのだそうです。
機動力もあって、パワーも十分!
となると、この「EC-AS700」は二兎を追って二兎を得たスペシャルな製品ということになるわけですが、そうそうウマい話はもちろんありません。
重さについてはキャニスタータイプでは確かに世界最軽量なのでしょうが、単純な重さだけの話となるとスティック型に対抗するのは難しいのです。
同じシャープの軽量タイプのスティック型コードレス掃除機「RACTIVE Air EC-A1RX」の場合、標準的な使用状態での重量は1.5kgしかありません。
もちろんキャニスタータイプは本体を床に置いておけるという利点はあるにしても、気が付いたときにサッと掃除するというシーンを考えたときに、いくらその方が軽いとはいえ、コロコロとそこまで転がしていくことになるキャニスタータイプの掃除機より、本体そのものが軽いスティックタイプの掃除機の方が、準備の簡単さなどを考えると有利となってくる可能性は否定できません。
そして、パワーについても懸念があります。
瞬間的なパワーについては十分なのでしょうが、そのパワーがバッテリー頼みというところは、この「EC-AS700」も他のコードレス掃除機と変わりません。
この「EC-AS700」は強モードでは約8分しかバッテリーがもちません。
この「EC-AS700」の場合は、予備のバッテリーが付属してくるので、実際の掃除の際にはあともう8分強モードで掃除が出来ますが、これは同じシャープのスティック型のコードレス掃除機と同じです。というか、それもそのはずで、この「EC-AS700」は他のスティック型のコードレス掃除機と同じバッテリーを搭載しているのです。
同じバッテリーを使って、強モードにした時に使用出来る時間が同じということになると、消費されている電力が同じということになります。吸引口やモーターの違いにより多少の差はあるのでしょうが、コード付きキャニスタータイプと同レベルだという触れ込みのこの「EC-AS700」の吸引力は同じシャープのスティック型コードレス掃除機と大して変わらないというか、たぶんそういうことなのでしょう。
機動力については、キャニスタータイプとしての利点もあるけど、スティック型の存在を葬り去るほどではない。そして、パワーについては、スティック型とそんなに変わらない。
結局のところ、この「EC-AS700」がこのレベルに留まっているとすると、
家に置いておく掃除機は、果たしてこの「EC-AS700」だけで良いのかな?
という疑問が生じて来ます。
確かに予備のバッテリーがあることで、この「EC-AS700」は強モードで実質的に16分(8分×2)、自動エコモードなら約40分(20分×2)掃除をすることが出来ます。しかし、万が一バッテリーが切れた場合は、1つのバッテリーの充電には約80分が必要となります。
予備のバッテリーがあることで融通が利くという側面はありますが、もしも予備バッテリーの充電をうっかり忘れていた場合などは一気に掃除可能な時間が半分となってしまう危険性もあります。
心配だから、もう1つコード付きの掃除機を持っておこう。
もしもそう考えたときに、サブとなるコード付きの掃除機としてキャニスタータイプの掃除機が浮上してくる可能性は少なくないでしょう。というか、コード付きでスティックタイプの掃除機を考えてしまうと、一気に選択範囲が狭まってしまいます。
メインはコードレスのキャニスタータイプの掃除機にして、サブにもコード付きのキャニスタータイプの掃除機。
あれ?キャニスター多くない?
となりはしないでしょうか。
キャニスタータイプの掃除機には、スティックタイプの掃除機よりも保管に場所を取ることが多いということも考えておく必要があるでしょう。
そこで、ああそうか、予備の掃除機はあまり場所の取らないコードレスのスティックタイプの掃除機にすれば良いんだ。ちょっとした掃除には予備のスティックタイプの掃除機を使って、メインはこの「EC-AS700」にしよう。
と考えるとどうでしょう?
メインにコードレスのキャニスタータイプの掃除機で、サブもコードレスのスティックタイプの掃除機。
あれ?コードレス多くない?
となりはしないでしょうか?
というか、これでは万が一のバッテリー切れという事態への対処が万全と言えるのか、疑問が残る感じになってしまいそうです。
もし、この「EC-AS700」に他のスティックタイプのコードレス掃除機とは比較にならないほどのパワー、もしくは圧倒的なバッテリー容量があれば、キャニスタータイプのコードレス掃除機として大きな違いを見せつけることが出来たかもしれませんが、そうではありません。
では、いざというときにはコード付きでも使えるというような変則タイプかというと、そうではありません。
普通に使えそうな、軽量タイプのコードレス掃除機なのです。
この「EC-AS700」には意欲的な製品という感じはありますが、コードレスとはいえ、キャニスタータイプの掃除機である以上、家に置いておく掃除機は基本的にこの1台で大丈夫!という安心感がもう少し欲しかったような気もしないでもありません。
■EC-AS700のスペック
集じん容量 | 0.25L |
吸込み仕事率 | - |
運転時間 | 弱:60分/強16分※バッテリー2個使用 |
充電時間 | 約80分※バッテリー1個 |
運転音 | - |
サイズ | 幅204×奥行390×高さ230mm |
重さ(標準使用時) | 2.9kg |
バッテリー寿命 | 充放電約1,100回 |
バッテリー価格 | 8,000円+税 |
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