小手先の機能を盛り込み過ぎな感もあるパナソニックの衣類乾燥除湿機「F-YHTX120」

乾燥能力に優れていて、様々な機能も満載のハイスペックモデルです。


パナソニック 衣類乾燥除湿機 F-YHTX120-N シルキーシャンパン

全部で5機種ある現行のパナソニックの衣類乾燥除湿機の中で、上から2つ目となるモデルです。

パナソニックの衣類乾燥除湿機は、この「F-YHTX120」を含む上位の3モデルが「コンプレッサー式」と「デシカント式」を組み合わせた「ハイブリッド式」となっているのに対し、下位の2つのモデルは「デシカント式」となっているので、完全に別扱いのモデルです。

上位の3モデルについては、最上位モデル「F-YHTX200」の除湿能力が1日あたり最大17リットル、2番目となるこの「F-YHTX120」は最大10リットル、3番目の「F-YHTX90」は最大6.5リットルと、基本的にパワー別のラインアップとなっています。細かく見るとパワーだけでなく、搭載している機能についても、最上位モデルから順にランクダウンしているのですが、ハイブリッド式を活かした高い除湿能力を持ち、センサーと必殺の「ナノイーX」を組み合わせた多彩な運転モードを備えているということについては、ほぼ共通の特徴となっています。

この「F-YHTX120」も、それなりにパワフルな除湿能力に加え、大きなルーバーを備えており、約165cmというワイドな範囲に送風をすることが出来ます。ルーバーの先端にはフラップが付いており、これを調整することでより細かく風向を設定することが可能です。温度と湿度センサーを搭載し、乾燥の開始からその数値変化を解析することで、乾燥完了を見極めて運転を自動で停止するお利口な機能も付いています。また、「水から生まれた次世代健康イオン」とされる「ナノイーX」を放出することで、部屋干し臭を抑えることもできます。

率直に言って、高い性能を持った衣類乾燥除湿機だと言うことが出来るでしょう。

ただ。

この「F-YHTX120」を使いこなすことは、そう簡単ではありません。

もともと、この「F-YHTX120」は、「衣類乾燥除湿機」というカテゴリーの名前からも分かるように、「衣類乾燥」と「除湿」という大きな2つの働きを担っています。

「衣類乾燥」と「除湿」は、どちらも部屋の中の湿気を吸収するという意味で、もともと少しニアミス気味の機能です。

極端な話、「除湿」で部屋の中をカラカラに乾燥させることが出来れば、その部屋の中で干している衣類も乾くに決まっています。しかし、密閉された狭い空間で使いでもしない限り、それが難しいので、ルーバーから吹き出す風で衣類を揺らしつつ、なるべく短時間で衣類を優先して乾燥させようという、「除湿」よりも細かな狙いを持った運転モードとなるのが「衣類乾燥」であると言えるでしょう。

除湿力が同じくらいの製品に対して、ルーバーの動きや、センサーの性能などを工夫することで「衣類乾燥」において差をつけようというメーカーの意図はよく分かります。

しかし、この「F-YHTX120」はそこからさらに進んでいて、「除湿」「衣類乾燥」の他に「ケア」という運転モードを搭載しています。

この「ケア」モードの中核を担う機能が「ナノイーX」です。

「ナノイーX」は、空気中の水分に電気を加えることで作り出された微粒子イオンで、シャープの「プラズマクラスター」と並んで、代表的なイオン兵器となっている「ナノイー」の強化版となります。実際の生活空間でどれくらいの効果があるかについては、生活空間の条件によって大きく左右されてしまうわけですが、密閉された実験空間での効果は実証されています。しかもその効果は、ニオイを抑えるだけでなく、花粉などのアレル物質を無力化したり、ウイルスを除菌したり、さらには美肌効果もあるという、実に幅広いものとなっています。

この幅広さが厄介です。

「ケアモード」には、クローゼットなどの衣類のニオイや湿気を取りたいときの運転モードとして「クローゼット」モード、単純に衣類のニオイや湿気を取りたいときの運転モードとして「衣類」モード、部屋のニオイを取りたいときの運転モードとして「部屋」モードと、「ケアモード」だけで3つの運転モードを搭載しているのです。しかも、どのモードも基本的にはニオイを取ることがメインではありますが、「クローゼット」の場合は湿度が約40%以上、「衣類」の場合には約60%以上、「部屋」の場合には約70%以上の際に、それぞれ除湿を組み合わせて運転するようになっており、その内容が微妙に違っています。

もちろん、微妙に違っているからこそ、運転モードが分かれているわけですが、実際にこの「F-YHTX120」が行っているのは、「ナノイーX」を放出しつつ、湿度に合わせて除湿運転をするということだけです。

はたして、この微妙な差で運転モードまで分ける必要があったのでしょうか?

何しろ、この「F-YHTX120」は、「衣類乾燥」でも4つの運転モード、「除湿」にも風量の差で3種類、さらに「おまかせ」も加えた4種類の運転モードがあり、ここに3種類の運転モードを持つ「ケア」が加わり、その上、「衣類乾燥」の後に「除湿」を行う「カラッとキープ」や「衣類乾燥」後に「ケア」を行う「ケアキープ」などのセットモードも存在するのです。おまけにルーバーの風向調整を上下と左右で設定したり、タイマーを設定したり、出来るというか、必要な場合は設定しなければなりません。

この結果として、この「F-YHTX120」の操作パネルには、実にたくさんのスイッチが並ぶこととなっています。

また、実はこの「F-YHTX120」は、旧モデルである「F-YHSX120」と基本的なスペックは変わらないモデルです。

スペックは変わらないのですが、例の「ケア」モードについては内容が異なっています。

旧モデル「F-YHSX120」の場合、「ケア」モードの中身は「クローゼット」「ニオイ」「花粉」の3種となっていて、「クローゼット」については全く同じで、「ニオイ」については「衣類」と同じなのですが、「花粉」はその時の湿度にかかわらず、除湿は行わない運転モードとなっているなど、これまた微妙な違いとなっているのです。

旧モデル「F-YHSX120」をリニューアルして、この「F-YHTX120」を作る際に、「花粉」モードを「部屋」モードへと名前を変え、湿度が高いときには除湿も行うようにプログラムを変更したということになるわけですが、力を入れる場所がそこだったのかどうか、そもそも必要な変更だったのかどうか、ちょっと気になってしまうところです。特に「ナノイーX」については、色々な効果が期待できるだけに、とりあえず入れておけば良いでしょ、みたいなノリすらありそうです。

どうせなら、「ニオイ」やら「花粉」やらへの対応は、その専門家である「空気清浄機」にお任せしてしまい、余計な機能は削ぎ落し、

部屋干しした後は、おまかせ乾燥。スイッチは1つだけ!

みたいな方が便利なような気がしてならないのですが、機能を削ぎ落す=価格も削ぎ落すことになると思われるので、メーカーの選択肢には入らないのかもしれません。

■F-YHTX120のスペック

発売2020年4月
タイプハイブリッド式
除湿能力(1日)9/10L(50/60Hz)
衣類乾燥時間約75分
消費電力685/715W(50/60Hz)
除湿面積(木造)11/13畳(50/60Hz)
除湿面積(プレハブ)17/19畳(50/60Hz)
運転モードケア/除湿/衣類乾燥
搭載センサー温度・湿度
タンク容量約3.2L
サイズ高さ580×幅370×奥行225mm
重さ約13.9kg
運転音48/49dB(50/60Hz)
送風上下自動・左右自動

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