ダイソン 360Eye
ダイソンがついに完成させたロボット掃除機です。
【国内正規品】 ダイソン ロボット掃除機 360Eye RB01NB
この「360Eye」はその製品名からも分かるように、本体に360度全周を写すことのできるカメラを搭載しており、そのカメラで部屋と自機の位置関係を把握して、効率的かつ、正確な移動が出来るようになっているのだそうです。そして、部屋を複数のエリアに区切って順番に掃除をしていきます。「ルンバ」が最新モデル「980」から採用したことで、一気に本流となった感のある、いわゆる几帳面タイプの掃除方法です。そして、ダイソンの掃除機と言えばサイクロンです。もちろん、この「360Eye」もダイソン自慢のサイクロン機構が搭載されたロボット掃除機となっています。
4倍!でも非力?
ダイソン印のサイクロン機構を搭載したこの「360Eye」は、なんと「他のロボット掃除機の4倍の吸引力」があるのだそうです。ダイソンがロボット掃除機を市販するのは初めてなのですが、いきなり他のロボット掃除機全てを相手に回しての力強い宣言です。
「サイクロン=吸引力が強い」という神話が既に過去のものとなっていても、ダイソンのサイクロンは他のサイクロンとは違います、というダイソンの攻撃的なまでの自信はちっとも揺らぐことはないようです。
このダイソンの絶対的な自信の源となっているのは、ずばりパワーを生み出すモーターそのものです。「360Eye」に搭載されているモーター「ダイソンデジタルモーターV2」は毎分最大78,000回転するのだそうです。
実は、ダイソンのキャニスタータイプの最新モデル「ball fluffy」やコードレスタイプの「V8」、ハンディタイプの「V6」に搭載されているモーターは10万回転以上をうたっているので、それと比べると、この「360Eye」のモーターはだいぶ非力な感じなのですが、さすがのダイソンをもってしても、現状のロボット掃除機に搭載出来るのはこれくらいで十分というか、これくらいが限界ということなのでしょう。
そして、この「360Eye」は8つの小さなサイクロンでゴミを遠心分離しますが、こちらもモーターと同じように、キャニスターや、コードレスなど、他のダイソン印の掃除機のような多層構造のサイクロンとはなっていません。当然、ゴミの分離能力も劣っているということになるのですが、これについても、ロボット掃除機のゴミ分離能力はこれくらいで十分だよということなのでしょう。
つまりこの「360Eye」は、ロボット掃除機ではない他のダイソンの掃除機と比べると、吸引力は弱く、ゴミを分離する能力も低いということになるのですが、それでも「他のロボット掃除機の4倍の吸引力」があると言われれば、やはりロボット掃除機を検討するときに、この「360Eye」が候補として上がって来る可能性は高いでしょう。
やや微妙な稼働時間
ダイソンの掃除機がこれまでに築き上げた実績と人気といつも通りの自信満々な姿勢を考えれば、この「360Eye」の吸引力については、それが正確に「他のロボット掃除機の4倍」あるかどうかは別にしても、まあ期待しても良いのではないかという気になります。
しかし、ロボット掃除機の掃除機を除いた部分、ロボットとしての性能は全くの未知数です。これについては、この分野で支配的な立場を占めているアイロボット社の「ルンバ」を無視することは出来ません。
まず「360Eye」の見た目を「ルンバ」と比べると、この「360Eye」の本体はずいぶんズングリしている感じがします。これは錯覚ではなく、「ルンバ(980)」の本体サイズが最大幅353×高さ92mmなのに対し、「360Eye」は最大幅240×高さ120mmとなっています。全体のサイズとしては「360Eye」の方が小さいですが、高さは増しているのです。
これはどちらが良いのでしょうか?
本体が小さければ、狭い場所にも入り込んで掃除をすることが出来るので、どちらかというとロボット掃除機のサイズは小さい方がベターなような気がします。
「360Eye」と「ルンバ(980)」の本体の幅の差は、「360Eye」が113mm小さく、高さは28mm高くなっています。
数字的には明らかに「360Eye」の方が小さいです。幅と高さという違いがあるので、家具の下のスペースなどで、「ルンバ(980)」には入れて、「360Eye」には入れないという薄い空間が存在する可能性もありますが、わずか28mmの差では、「ルンバ(980)」、「360Eye」のどちらも入れない!という薄いスペースが存在するパターンの方が圧倒的に多そうです。
要するに、より細かく掃除をしてもらうためには、よりサイズが小さい「360Eye」の方が良いということになって来るわけですが、サイズが小さいということは、同じ広さを掃除するために何度も行ったり来たりしなければならないということでもあります。
ここで問題になるのが、この「360Eye」と「ルンバ(980)」の稼働時間の違いです。
「360Eye」→約45分
「ルンバ(980)」→最大120分
なんと「ルンバ(980)」は「360Eye」の2.5倍以上の稼働時間を誇るのです。どちらのモデルも掃除途中でバッテリー不足になった場合は、自動で一度充電台に戻り、充電完了後に掃除を中断した箇所から掃除を再開するという機能を備えていますが、充電にはどちらも3時間前後かかります。
掃除に1時間弱、充電に3時間前後、そしてまた掃除に1時間弱ということになると、5時間近くもの間「まだ掃除の途中」という落ち着かない時間が続くこととなります。
「360Eye」が1回の充電でどれくらいの広さを掃除することが出来るのかについては、残念ながらヒミツとなっているようですが、いつもなら自信満々のダイソンさんが触れて来ていないということからも、この「360Eye」が1回で掃除出来る面積は少なくともトップクラスでは無いという仮説を立てておいた方が無難でしょう。
小回りを効かせた掃除は出来ても、スタミナに不安があるとなるというのは、ちょっと微妙な印象です。
これまた微妙なメカニカル面
また、細かな点を見ていくと、短めの稼働時間以上に気になる点があります。
まず最初の懸念は、この「360Eye」には、ロボット掃除機に入って欲しくないエリアを区切る機能が無いということです。他のメーカーでは、赤外線で見えないバリアを張ったり、床に磁気テープを貼ったりして侵入禁止エリアを作る工夫をしているモデルが多くありますが、ダイソンは思い切って省略です。ロボット掃除機を発売するにあたってのダイソンの長年の研究の結果、ロボット掃除機に入って欲しく無いエリアなど無い。あっても、何か重たい物でも置いておけば大丈夫!という結論に達したのかもしれません。
まあ、それはそれで良いかもしれませんが、え?ロボット掃除機に入って欲しくないエリア、ウチにはあるかもしれない、、、と思いついてしまった人にとっては、ダイソン「360Eye」との決定的な別れにつながりかねないだけに、これは大胆な一手と言えるでしょう。
また、この「360Eye」には、他の多くのロボット掃除機が搭載している本体前方でクルクル回る小型ブラシがありません。「ルンバ」では「エッジクリーニングブラシ」と呼ばれているこのタイプの小型ブラシには、おそらく本体周辺のゴミを吸い込み口に誘導するという役割があるのだと思われますが、ダイソン社の考察によると、単にゴミをまき散らしているだけなのだそうです。うーん、これは頂けません。そこで、この「360Eye」では代わりに本体下部の回転ブラシを本体幅一杯にすることでゴミの取り残しを防ぐことにしたのだそうです。
なるほど、という感じもしますが、この方法だと部屋のコーナーのゴミを取ることは物理的に出来なさそうです。確かにゴミをまき散らすリスクはゼロかもしれませんが、コーナーの掃除を完璧にやり遂げる可能性もゼロなのではないでしょうか?
ゴミをまき散らしてでもコーナーのゴミを何とかしようとするのが良いのか、コーナーのゴミは取れないものとしてハナから考えない方が良いのか、これはどちらが良いというよりもメーカーの姿勢の違いということなのかもしれません。
まとめ
この「360Eye」の吸引力は確かに強いのかもしれませんが、掃除方法、移動能力やバッテリーについては標準的な印象です。また、カメラ搭載タイプのロボット掃除機に共通することのようですが、カメラの映像に依存する分、部屋がある程度明るくないと位置を把握出来ないという弱点も抱えています。
単純なかたちをしていて、明るい部屋、そして、なるべく広すぎない部屋。たとえば、日当たりの良いワンルームなんかを掃除させれば、自慢の吸引力を思う存分発揮してくれるかもしれません。ただし、この「360Eye」に複数の部屋を掃除してもらおうと考えている場合は約3時間の充電を挟んだ長期戦になる可能性を見越しておいた方が良いかもしれません。
さすが「ダイソン」というべきなのか、初のロボット掃除機としては、全体的にそこそこ使えそうな印象はありますが、公式サイトでの約15万円という妥協の無い価格設定を見てしまうと、そこそこの性能では満足出来ない人を大量量産してしまう可能性をはらんでいたりしそうです。
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