色々と不安な感じが否めないTENKERの「超吸引 ふとんクリーナー」

曲線で構成された滑らかな外観が特徴的な布団クリーナーです。


TENKER 布団クリーナー 超吸引

このTENKERの布団クリーナーはアマゾンのふとんクリーナーランキングにおいて長らく人気を博している製品です。

布団クリーナーといえば、布団専用クリーナーの草分けであるレイコップの製品がその代表となるでしょう。

その特徴は、布団の上を動かしやすい形状、布団に吸い付いてしまわない適度な吸引力、ダニを弱らせる紫外線放射機能、布団からゴミを浮き上がらせる叩き機能、などとなっています。

そして、このTENKERの布団クリーナーはそれらの特徴を全て備えているのです。さらにレイコップの製品でも一部のモデルにしか搭載されていない、排気を利用することで布団を乾燥させる機能も付いています。その上、この TENKERの布団クリーナーは布団掃除用のヘッド(=ベース)から、吸引機構本体を取り外すことで、コード付きではありますがハンディクリーナーとしても使うことが出来るようになっています。

それでいて、レイコップの多くの製品より安価な価格設定となっているのです。

現在、布団クリーナー市場自体がそれほど活気づいているわけでもないという事情はあるものの、布団クリーナーの購入を検討する際に候補の一つとして浮上しやすいモデルと言えるでしょう。

ただ、このTENKERの布団クリーナーには気になる点がいくつかあります。

まず「TENKER」というブランド名は全く著名なものではありません。もしかするとブランド名ではなくメーカー名なのかもしれないのですが、ブランド名なのか、メーカー名なのかもはっきりしないという時点で、不安を増しこそすれ、安心につながるものでは全くありません。アマゾンを含む販売サイトにおける説明文のカタコト感や、販売元が中国の会社であることからも想像する限り、中国を拠点としてOEM生産されている製品であるという可能性が高そうです。

もちろんOEM製品だからといって、それ自体が問題ということはありません。

ただ、このTENKERの布団クリーナーの場合、単に「布団クリーナー」というだけでなく、「1台4役」という、何だか特別に使い勝手の良さそうなセールスコピーが付いていることが気になります。

前述の通り、このTENKERの布団クリーナーが布団掃除用のヘッド(=ベース)から本体を取り外すことでハンディクリーナーとしても使うことが出来ることは、確かに便利なところかもしれません。しかし、それは「2 in 1」などと表現され、一般的には「1台2役」とされるものです。

このTENKERの布団クリーナーはそれをはるかに超える「1台4役」を標榜しているのです。1役目の「布団クリーナー」、そして2役目の「サイクロン式の掃除機(ハンディクリーナー)」まではもちろん分かるのですが、3役目は「布団乾燥機」、そして4役目は「電動吸引ポンプ」となっています。

製品説明を見る限り、3役目の「布団乾燥機」とは、この布団クリーナーが排気を利用した布団乾燥効果を持っていることに由来するようです。

これはどうなのでしょうか?

「布団乾燥機」と聞いて普通に想像する製品は、本体から伸ばしたホースから温風を吹き出すことで布団全体を文字通り乾燥させることが出来る製品です。

ところが、この布団クリーナーは高い温度の排気を布団に吹き付けることで、排気が当たっている場所については乾燥効果があるかもしれませんが、その時間はかなり短いものとなるでしょう。基本的にある程度の時間をかけて連続運転することが想定されている一般的な「布団乾燥機」とはだいぶ異なる乾燥方法と言わざるを得ません。率直に言って、この布団クリーナーを使用して、布団のゴミを取るだけでなく、本気で布団を乾燥させようとした場合、膨大な時間と手間が必要となり、だいぶ使いにくそうな気がしてしまいます。

そして、4役目の「電動吸引ポンプ」とは、真空圧縮袋用のアタッチメントが付属することで、真空圧縮袋の空気を吸い取ることが出来るというだけのものです。

これまた大胆不敵です。

当座使うことの無い布団や衣類をコンパクトに圧縮することの出来る真空圧縮袋は便利なものですが、もともと掃除機を使って内部の空気を吸い取る想定がされていて、元々付属する吸い取り口が普通の掃除機に対応していることが多い製品でもあります。いくら専用のアタッチメントが付いていると言っても、それを「電動吸引ポンプ」として1台4役のうちの1役としても良いものなのか、ちょっと当惑してしまうところです。ひょっとすると真空圧縮袋を普段から良く使う人にとっては、袋を圧縮する際に、普段使っている掃除機を引っ張り出してくるよりも、この布団クリーナーのようなコンパクトな製品を使って空気を吸い取れた方がすごく便利!という市場調査にでも基づいているのかもしれませんが、この機能なり、アタッチメントなりが付いていることが、この布団クリーナーを購入する決定打となる可能性は相当低いような気がしてなりません。

いくぶん誇張気味な「1台4役」だけでなく、この布団クリーナーの吸引性能についても気になるところがあります。

この布団クリーナーはコード付きということもあり、「15000Pa」だったり、「15L/S吸込流量」といった、ちょっと分かりにくい数字を使って高い吸引力が強調されていますが、吸い込んだゴミについては最初の関門となる「ステンレス製のメッシュガード」で大きなゴミを漉し取り、微細なハウスダストは次の関門となる「HEPAフィルター」でキャッチする構造となっています。

ここまでは特に問題は無さそうなのですが、HEPAフィルターを通過した微細なゴミについては「排気口のスポンジ」でキャッチすることとなっているのです。

スポンジ?

「HEPAフィルター」でキャッチすることの出来なかったゴミを果たして「スポンジ」でキャッチすることが出来るのでしょうか!?

まあ、ミクロのゴミが「スポンジ」のどこかに引っ掛かる可能性は否定出来ないので、たぶん「スポンジ」が無いよりはあった方が良いのでしょう。しかし、この布団クリーナーの場合、この「スポンジ」を通過してしまうと、布団を乾燥させる効果のある排気として、布団に吹き付けられることになっているので、ミクロのゴミが再び布団に戻ってしまう可能性がありそうなだけに気になるところです。

もちろん、この布団クリーナーの「HEPAフィルター」は交換品を別途購入することが出来る上に、水洗いでキレイにすることも出来るので、たとえ一度取り残したとしても、何度でも、何日でもあきらめずに吸込み続ければ、いつかは「メッシュガード」か「HEPAフィルター」か「スポンジ」のどこかに引っ掛けることは不可能ではありません。しかし、もっと高い性能の掃除機があれば、それで吸い取ってしまった方が早いのかもしれません。

怪しい感じの「1台4役」や、心もとないフィルター構造など不安要素があることは否めませんが、それでも数年に渡って人気を博しているこの布団クリーナーが全く使えない製品なのかというと、そんなことはないのでしょう。しかし、どうしてもこの製品が良い!という雰囲気がそれほど無いことも事実です。

そもそもこれだけ長い期間販売されていながら、製品名もはっきりしないということには驚くばかりです。アマゾンでの製品名は「TENKER 布団クリーナー 超吸引 15Kpa たたき8000回/分 一台四役 UVランプ 温風 サイクロン式掃除機 ふとん用ダニクリーン 布団 掃除機 布団乾燥 ダニ取り 梅雨対策 ホコリ/花粉/アレルギー物質除去 スキマノズルと真空圧縮袋用ノズル付き」という、もはや念仏に近いものとなっていて、少なくともこの製品の販売者がこの布団クリーナーに呼びやすい名前を付けてあげようという愛着なり、こだわりなりは持っていないであろうことが推測されます。

■TENKER 超吸引ふとんクリーナーのスペック

発売2017年4月
集じん容量-
吸込仕事率-
消費電力475W
運転音60dB
サイズ幅380×奥行265×高さ280mm
重さ2.3kg
付属品すきまノズル・真空圧縮袋用ノズル

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