アイロボット ルンバ「980」
ロボット掃除機の代名詞とも言えるアイロボット社「ルンバ」の最新モデルです。
「ルンバ史上最高の清掃力で家中くまなく清掃します」
だそうです。
「史上最高」なんて言われても、新型モデルなんだから、そりゃそうでしょ、という気がしないでもありません。
なにしろ、この新型モデル「980」のオフィシャル価格は125,000円です。これはもちろんルンバ史上最高価格です。1世代前の上位モデル「885」がオフィシャル価格で84,000円ということを考えると、圧倒的な最高価格と言えるでしょう。これでもしも「980」が「史上最高」の能力を持っていないなどということになると、「980」は黒歴史としてルンバ史上から抹消されかねないような気すらして来ます。
ルンバ史をくつがえす風雲児
「ルンバ史上最高」をほとんど義務付けられてしまっているようなこの「980」ですが、その仕様は、大胆なことに過去の「ルンバ」たちとは大きく一線を画すものとなっています。
この「980」は、過去の「ルンバ」たちが最も得意とし、他製品との大きな差であるとも言われていた、一見ランダムで、その実、人工知能によって計算されているという独自の走行パターンを思い切り良く捨て去ってしまっているのです。
そしてその代わりに、カメラとセンサーを用いて、掃除をする部屋の形状と、自機がどこを走行したのかを記憶しながら、合理的に無駄なく掃除をするようになっているのです。
これは相当な変化です。
掃除するスペースを把握しつつ、エリアを区切って順番に掃除をしていくという方法は大変分かりやすいです。
よほどの自由人でない限り、人間が掃除をするときにもだいたいそうします。ロボット掃除機にとっても、動きに無駄が少ないため、1回の充電でより広い面積を掃除できるという利点があります。実際、この「980」の清掃可能面積は最大112畳とされていて、これまでのルンバたちの清掃可能面積の目安である約25畳では、貧弱過ぎてまったく勝負になりません。まさにケタ違いの広さを清掃出来るようになっているのです。
さらにモーターも強化されていて、旧モデル(700シリーズ)と比べると、最大10倍もの吸引力を誇るのだそうです。なんで、すぐ前のシリーズである「800シリーズ」と比べずに、わざわざもう1世代前の「700シリーズ」と比べるのかというと、たぶん「10倍!」と言ってみたかっただけなのでしょう。「800シリーズ」も「700シリーズ」と比べて5倍アップの吸引力をうたっていたモデルなので、勝手に単純計算をすると「980」は「800シリーズ」の2倍の吸引力ということになります。10倍と比べるとグッと見劣りしますが、はっきり言って2倍でも相当スゴいことのような気がします。
より広い面積が掃除できて、よりパワフルということになると、さすがは「史上最高」モデル!と拍手喝采が起きそうです。
本当に、本当に「史上最高」?
「史上最高」の性能をもつという「980」にも、気になる点が無いわけではありません。
この「980」のように掃除するエリアを区切り、順番に掃除していく「几帳面タイプ」のロボット掃除機は過去にも、そして現在も存在しています。効率の良い「几帳面タイプ」のロボット掃除機は、掃除出来る範囲が広かったり、掃除を早く終わらせることが出来たりすることが多いです。
しかし、ロボット掃除機にとって重要な能力はどちらかと言うとスピードよりも、部屋をどれくらいキレイに出来るのか、ということです。実際に、この点で過去の「几帳面タイプ」は「ランダムタイプ」であるこれまでのルンバたちに苦杯を舐めてきたという歴史を無視することは出来ません。
まあ、ロボット掃除機の掃除能力を示す基準が特にあるわけではないので、単にこれまでのルンバたちが過大評価されていたという可能性もなきにしもあらずなのですが、同じ箇所を平均して約4回掃除するという触れ込みは過去のルンバたちの大きな魅力の1つでした。あれだけランダムっぽく動きながら、ちゃんと合理性を維持しているという人工知能の能力の高さに加え、同じ箇所を別方向から掃除することでゴミの取り残しを防ぐという理屈にもなかなか説得力がありました。
しかし、この「史上最高」ルンバである「980」はどうやら、同じ箇所は1回、ないし多くても2回の走行となっています。もちろん、他のルンバと同じくゴミセンサーは搭載しているので、ゴミが多いと感知した場所については念入りに掃除をしてくれるので、やたらとゴミを取り残すということはなさそうです。
旧モデル「800シリーズ」と比べて、「980」の吸引力は少なくとも2倍と考えれば、強力な吸引力で2回掃除をすれば、半分の吸引力で4回掃除をするのと変わらない、そして掃除結果が変わらないなら、無駄に走行せず、広い面積を掃除出来た方が良いでしょ!というのがこの「980」を開発する上での結論ということなのでしょう。
まとめ
国内のロボット掃除機史上で圧倒的な成功を収めていたかのように見えるアイロボット社がここまでの変化にチャレンジして来たということは驚きですが、もしかするとこれまでのルンバたちと同じ方法では、清掃可能な面積がもう限界に来ていたということなのかもしれません。
最新型「980」は過去のルンバたちにはなかった、掃除途中で電池が切れた場合に、一度充電台に戻って充電をし、中断したところから掃除を再開するという機能を備えています。これは部屋をマッピングする機能を持たなければ搭載することの出来なかった機能でしょう。
本当に少ない走行回数でこれまでのモデルと同じレベルの掃除が出来るのか?という不安はありますが、段差を乗り越えたり、テーブルや椅子の足周りを丁寧に掃除をしたりするなど、これまでのルンバで一定の評価を得ているロボット掃除機としての運動能力については、かなりのレベルで信頼することが出来ると思われるので、広大な邸宅にお住まいの人にとっては魅力的な製品と言えるかもしれません。広い面積を2台目、或いは3台目の旧型ルンバを投入することでカバーするよりは、経済的に見ても安くつきます。
ただ、この「980」は、過去のルンバと全く異なる仕組みで動く上に、旧タイプとなった「ランダム系」ルンバ「800シリーズ」の新モデルも投入されてきたりするので、これからの「ルンバ」の目指す方向性が分かりにくい雰囲気が立ち込めて来ています。アイロボット社の製品ラインアップが今後どうなっていくのか、特に邸宅住まいの方にとっては、見逃せないことになりそうです。
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